「超音波による乳がん検診の手引き」に対するパブリックコメントへの回答現在日本乳癌検診学会乳房超音波検診精度管理委員会では「超音波による乳がん検診の手引き」を作成中です。この原稿を日本乳癌検診学会のホームページ上に公開し、2015年6月末日を締め切りとしてパブリックコメントを求めました。 パブリックコメントに対して以下に回答します。 |
日本乳癌検診学会乳房超音波検診精度管理委員会 委員長 東野 英利子 |
ご意見 1.当センターは検診のみの機関です。住民検診はエコーが出来ないのでFADや境界明瞭な腫瘤でも精密検査になる傾向になります。 |
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回答 ご質問は総合判定にも関わるのですがマンモグラフィで境界明瞭な腫瘤像の場合に超音波が行われていれば超音波の所見が優先となります。それでは超音波で充実性腫瘤の場合にはどうするかということですが、これは検診における充実性腫瘤の診断樹に図6.2.3沿って行うことになります。症例報告でFAの経過観察中に乳がんだったという例をみます、とのことですが、この症例が充実性腫瘤の中のどのような所見であったのかの記載がありません。線維腺腫の診断がつけば精査不要となります。線維腺腫のなかに乳癌ができることはきわめて稀です。超音波で認められる充実性腫瘤の全てを要精査にしてしまうと要精査率が高くなり、不利益が増えます。そこである程度まとまった報告、たとえば「○○のような所見は○○パーセントがんの可能性があるので要精査とした方がよい」ということがあれば診断樹の変更を考慮しますが、症例報告では変更の根拠にはならないと考えます。そこで、ご意見をお伺いすることにとどめたいと思います。 |
ご意見 A家族に乳がんがある場合どうするかです。野口の分類(野水の分類かと思われます)に適する症例は病院へ紹介しますが、家族に1人とか2人いる症例をどうするかです。第一度近親者(母親、娘、姉妹)に乳がんがある場合で1人ではエコーも必要とのことで紹介したり、当センターでエコーしております。2人の場合やはり病院へ紹介すべきか迷います。叔母。祖母、従姉妹に乳がんある場合どうするかです。テキストによると第一度近親者の場合こまめに検診すべきとありました。 |
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回答 2.1.1. 対象に関するご意見でしょうか。 |
ご意見 B不均一高濃度や高濃度の乳腺に対して1〜2年毎にMMG撮っていますが、千葉県のように毎年ならエコーと交互にするべきのように思います。 |
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回答 マンモグラフィと超音波を毎年交互に行うことに関しては有効というエビデンスがありません。そこで、今回はJ-STARTで結果の得られた隔年に両検査を行う、ということを基本に記載したいと思います。これを基に総合判定も可能となります。もちろん、任意型検診においては要精査率が高くなる(2年間の和となる)などの不利益の可能性を説明した上で施行することは可能ですし、交互の検診のほうがよいという科学的根拠が示されれば、そちらに変更する可能性はでてきますが、現時点では交互にするという根拠はありません。 |
ご意見 C40歳未満の症例にMMGによる検診をしている機関がありほとんどが不均一高濃度か高濃度の症例でした。やはり40歳未満はエコーに限ると指針を出すべきかどうかです。 |
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回答 超音波検査に関して死亡率減少効果はまだ証明されていません。40歳代に関しては、今後J-STARTの結果で効果を評価することが可能です。しかし、40歳未満に対して現在乳がん検診自体、有効であるというエビデンスがありません。従って、今回は積極的に対象としては記載しておりません。ご意見も特にエビデンスを示されたものではないので、変更はしないことにしたいと考えます。なお40歳未満に関しては以下の記載となっております。 |
ご意見 2)ブラウン管および液晶モニタは十分な大きさのものを使用する。 |
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回答 2)のモニタは超音波装置本体のモニタを示しています。モニタの種類は記載せず, |
ご意見 2)ゲインで全体の明るさを、ダイナミックレンジでグレーの階調を調整する
「一度に識別可能な、シグナルの最小値と最大値の比」を示します. |
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回答 ご指摘のとおりだと思います。 |
ご意見 3.2.4 モニタ・プリンタの調整 |
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回答 部屋の明るさをできるだけ一定に保つのは移動して検診を行う場合などは難しいので、見えにくい場合に調整を行うのであれば・・・というようにケースを限定して整合性をとるためにP33の文を
「・・・直接光がモニタに映り込むことなどは避けるべきである。検査を行う場所の明るさが大きく変化しモニタが見えにくくなった場合、装置本体のゲインは調整せず、必ずモニタのブライトネスなどで映り具合を調節する。・・・」
に変更します。
以上、ご指摘ありがとうございました。
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ご意見 受診率、要精検率、精検受診率、陽性反応適中度の目標値が設定されているとよいと思われます。 |
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回答 ご意見ありがとうございました。(変更なし) |
ご意見 日ごろ検診判定を行う際にいろいろ感じたり悩んだりしていることがあっても、スペシャリストに直接質問したりご教授いただくことができない環境なので、今回のような機会を与えていただき大変感謝致します。 |
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回答 ご質問に関して原稿から考え、乳がん検診全体の年齢の上限を記載することに関するご意見と考えました。この手引きは「超音波による乳がん検診の手引き」ですので、現在記載されていることにとどめたいと思います。 |
ご意見 A施設基準について。
マンモグラフィーがまず基準であり、超音波単独での検診は想定していない、という点は、当然でしょうし十分理解できます。その上で、「受診者に不利益がある点を説明した上での超音波単独検診」も意味はあると思っております。 |
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回答 施設基準には超音波の施設基準しか記載されておりませんので、上記のご質問は対象と方法に関するご意見と受け取りました。 |
ご意見 B「精査を要しない良性の病名について受診者におしらせするかどうかは各検診機関で決めて良い」に関して。 |
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回答 今後の課題として十分に検討していきたいと思います。ご意見ありがとうございます。 |
ご意見 C「比較により前回と変化ないまたは縮小している場合はカテゴリー3を2にできる」について私どもの検診では、判定を「正常・略正常・経過観察・要精査・要受診」とするよう、上位機関から指定されております。現在私どもは、カテゴリー3は原則「要精査」という判定をするが、比較して前回と変化無い場合には、カテゴリーは3のままで、判定を「経過観察」としております。このような運用ではだめでしょうか?個人的には、このほうが、現時点の画像を忠実に表現できるように思いますが、BIRADSのようにマネジメント重視のカテゴリーが推奨されるということでしょうか? |
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回答 日本では検診は保険診療ではなく、精密検査は保険診療と考えております。そこで、保険診療を行なうのであれば、要精密検査となります。また検診機関と保険診療期間は別の施設を想定しております。ご質問の方の経過観察というのがそのどちらに相当するのかがわからないのですが、経過観察は通常の検診間隔よりも短い間隔で行なう、しかもその場合にはもしかすると両方の乳房を検査するのではなく、問題部位のみということであれば、精密検査の中に経過観察と組織診断の両方があり、その中の経過観察を行なっているとしたほうがよいと考えます。そして経過観察例のなかから癌と診断された場合にはもとの検診が正陽性と判断されると思います。 |
ご意見 D判定基準に対する意見 その1 →JABTSの方に直接ご回答いただけると幸いです
「5o以下の腫瘤はカテゴリー2。ただし形状不整なものはカテゴリー3以上とする場合がある」の中の”形状不整"という言葉を‟不整形"という言葉に変更していただきたい。 |
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回答 ガイドラインは今後も常に検証し、改訂していく予定です。その際にこのご意見も十分に検討したいと思います。ありがとうございました。 |
ご意見 E判定基準に対する意見 その2 →JABTSの方に直接ご回答いただけると幸いです
局所性に存在する低エコー域はカテゴリー3 |
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回答 ガイドラインは今後も常に検証し、改訂していく予定です。その際にこのご意見も十分に検討したいと思います。ありがとうございました。 |
ご意見 F線維腺腫について
「明らかな線維腺腫→カテゴリー2」は、つまり「精査不要」という判定ですね。当施設においては、個人的には「略正常」という判定で良いと考えるのですが、別の意見の医師の方が多いのです。それは”線維腺腫は腫瘍の一種であるから、略正常という判定をつけるのはおかしい、経過観察が妥当である"という意見です。線維腺腫は過形成の一種という論文がありますが、病理医に直接聞いてみたところ、病理医の中では”良性腫瘍の一種"という意見が一般的だそうです。もちろん、カテゴリー3になるものでしたら要精査が基本と理解しておりますが、カテゴリー2の基準にはいる「明らかな線維腺腫」のマネジメントは一般診療ではどのようになっているでしょうか? |
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回答 通常の臨床の場で、ご本人が触れて受診されたような場合に経過観察にすることはあるかも知れませんが、無症状の女性を対象にする検診の場では、乳癌の検出を目的としております。従いまして、検診の場合、あきらかな線維腺腫であると判断できた場合には、精査不要とします。 |
ご意見 G乳腺症について |
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回答 ガイドラインは今後も常に検証し、改訂していく予定です。その際にこのご意見も十分に検討したいと思います。ありがとうございました。 |
ご意見 1.P.43 カテゴリー判定 日本とACRBIRADS |
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回答 ご指摘ありがとうございました。訂正いたします。 |
ご意見 2.図6.2.3 右下表の 『D/W<0.7 最大径≦5mm 2+1』→『2 *1』 |
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回答 ご指摘ありがとうございました。訂正いたします。 |
ご意見 3.表 632 |
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回答 おっしゃる通りと思います。所見用紙は例ですので、どこに入れるかは施設に任せたいと思いますが。
マンモグラフィ所見用紙、超音波所見用紙に追加し、表6.3.1 超音波所見用紙に記載する項目にも追加しました。
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ご意見 4.641 |
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回答 Aに関しては記載してもしなくてもよいとしておりますので、このままにしたいと思います。
良性所見はカテゴリー2の所見となりますので、ばらつくことはないと思いますが良性所見で精密検査の必要はないと書かれていても不安になって精密検査を受診する受診者がいらっしゃいます。マンモグラフィや超音波検査の際に良性石灰化や、のう胞、良性腫瘤等がみられた場合に、以前の他施設での検診結果に良性所見ありと書かれている場合には以前からあったのであろうとより安心できる場合もあります。検診結果を拝見していますと、どちらもあるようです。検診施設によって、どちらを選ぶか、決めていただいてもよろしいかと考えます。
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ご意見 5.6.4.4 乳がん確定者追跡調査票(例) |
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回答 ご意見有難うございます。委員会委員に相談しまして、下記に変更しました。 |
ご意見 1.授乳中乳房において、mass等の描出などが困難になる可能性があるので当会では、検診は行っていませんがとのように取り扱っていけばよいでしょうか? |
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回答 妊娠・授乳は生理的な変化で疾患ではありません。ハイリスクでもありませんので、無症状者が検診を受ける権利はあると思います。対策型検診で検診対象となっている場合には受診は認めるべきであると考えます。任意型検診では検診施設で決めてよいと思いますが、それでは授乳中の方はどうしたらよろしいのでしょうか。 |
ご意見 2.乳房温存術後の方は、検診を行っておりませんが検診はどのように考えていけばよいでしょうか。(リスク等を考慮して) |
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回答 乳房温存術後はハイリスクですので通常の検診でよいかどうか、議論のあるところだと思います。また術後変化は偽陽性となることもあります。しかし治療を終了した方や治療後10年以上経過した方が今後増えてくると思います。この方々がいつまで外来を受診し、反対側乳房を含めたスクリーングを行うかは今後問題となってくると思います。検診従事者に対する教育では術後の乳房に関する検査も十分に行っていく必要があるかと思います。 |
ご意見 10ページ第4段落 徐細動ではなく除細動 |
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回答 ご指摘有難うございました。変更します。 |
ご意見 3ページの「任意型検診では精度管理が 不十分な施設が多く見受けられる様に思う。」は日本人間ドック学会理事として,ご指摘の通りと思います。現在,日本人間ドック学会では,腹部超音波,婦人科検診についての精度管理を始めようとしているところです。しかし,学会会員に乳腺専門医が少なく,貴学会のようなものが作成できず困っていました。日本人間ドック学会でもこれを参考にしたいと思い,紹介したいと思います。 |
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回答 ご意見有難うございました。 |
ご意見 「(超音波による乳がん検診は)検診施設でマンモグラフィを行うことが推奨されない、ペースメーカー、徐細動器挿入後の女性、注意して行うべきとされているV-P シャント挿入後、ワーファリン使用中の女性、マンモグラフィ不適とされた乳房、胸郭の異常のある女性は積極的に対象としてよい。」 |
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回答 ご意見ありがとうございました。 |
改訂箇所と改訂文 3.超音波装置の基準 3.1 装置等の基準 3.1.2 探触子 2)周波数帯域に12MHzが含まれている事を推奨する。 近年周波数コンパウンドが主流となり、探触子の周波数の定義が難しく、 また、Tissue Harmonic Imaging(THI)を使用している施設も多く、 中心周波数で基準を作成することが難しくなっている。 今後は第3者の画像評価機関が実際に行なわれている検査の画像を評価し、 適切であるかどうかを判断するのが望ましい。 元原稿 3.超音波装置の基準 3.1 装置等の基準 3.1.2 探触子 2)使用周波数帯域に10MHzが含まれていること。あるいは音響作動周波数が6.0MHz以上の探触子であること。 |
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変更理由 元原稿の2)「使用周波数帯域に10MHzが含まれていること。 あるいは音響作動周波数が6.0MHz以上の探触子であること」では分解能など画像が不適切なものが含まれることが分かりました。 また、乳房超音波ガイドラインでは「使用周波数は10MHz以上を推奨するが、探触子の特徴や乳房の形状、大きさにより周波数を適切に変更してもよい。」と記載されており、American College of Radiology(ACR) のガイドラインでは Transducers operating at a center frequency of at least 10 MHz (and preferably higher) と記載されています。 現在多くの装置では浅いところは高周波 、深いところは低周波で画像をつくる周波数コンパウンド機能が採用され、中心周波数では広帯域のプローブの評価が難しくなっております。 また、Tissue Harmonic Imaging (THI) を使用している施設も多く中心周波数で基準を決めることが難しくなっています。 そこで現行機種の探触子の周波数帯域などを検討した結果変更案が適切であると判断されました。 なお疫学その他に関して、新しい情報のあるものに関しては内容を大きく変更しない範囲でupdateしたいと考えております。 |