乳がん集検において、乳房自己検診(BSE)は医師の視触診に加えて乳癌の早期発見に有効で、正確でレベルの高いBSEを受診者に会得させることができれば、乳がん集検の効果はより一層上がるものと考えられる。しかし検診時にBSEの仕方を教えても、BSEを施行していなかったり、BSEを施行していても不正確なために「しこり」を見つけられない受診者が多い。そこで受診者がどの程度正確なBSEを会得したかを判定できるように「BSE実施評価レベルの判定基準」(BSE評価レベル)を作成し、これを用いて受診者がどのレベルまでのBSEが会得できているかを判定し(最高レベルA〜最低レベルD)、さらにどのレベルまでのBSEを会得する必要があるかについても検討した。
平成8年4月から同年9月までに、泉佐野市および岬町の一部と、田尻町での視触診法による乳がん集検(医師間での差をなくすため筆者1人で検診)を受診した合計331人(問診にて全員「しこり」などの自覚症状なし)を対象とした。このうち初回受診者を除いた集検受診歴有の250人でBSEを実施している者は53%しかなかった。さらにこの受診歴有の250人でどの程度のレベルのBSEを行っているかをBSE評価レベルを用いて検討した。問診時に受診者が行っているBSEを受診者自信で判定したレベルを自己評価レベルとし、診察時に受診者にBSEを行わせて医師が判定したレベルを医師評価レベルとした。
その結果、自己評価ではレベルA、Bの合計は67人に対し、医師評価ではレベルA、Bは合計13人(Aは0人)と自己評価よりきわめて少なく、自己評価に比し実際は低レベルのBSEが行われていることが示唆された。次に受診者がどの程度のレベルのBSEを会得する必要があるのかを検討するために、要精検と判定された47人のBSE評価レベルを用いて検討した。その結果、医師評価レベルC以下は96%であり、自分で「しこり」を見つけることができるためには、医師レベル「B」以上を会得する必要があるとの結果を得た。したがって受診者に正確にレベルB以上のBSEを会得できるように教えるためには、検診時に毎回、医師レベルB以上に達していない人にはマンツーマンにて直接受診者の手をとって教えることにした。
BSE評価レベルにより、受診者自身が自分でBSEの正確な評価ができ、医師レベルB以上を会得できれば、自分の乳房にもっと関心を持つようになり、さらに「しこり」を触れたときには、集検ではなく、直ちに医療機関の乳腺外来を受診し、その結果乳癌の早期発見率が一層向上することを期待したい。
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