日本においては視触診単独による乳癌検診が行われてきたが、その有効性に問題があり、2000年よりマンモグラフィ併用検診の導入が予定されている。そのために最初に明らかにしなければならないことはマンモグラフィ検診による利益がマンモグラフィによる放射線被曝のリスクを上廻ることを示すことである。本研究の目的は検診によって救命される人年(利益)をマンモグラフィによる発癌によって失われる人年(リスク)と比較することである。netの救命人年は筆者らの報告した癌検診の数学モデルによって計算され、1年間隔と2年間隔の場合について求められた。その際にモデルに代入する数値についてはがん研究助成金大内班の関係者のアンケートに拠った。一方、放射線被曝のリスクは放射線発癌によるものとし、乳腺の被曝線量、単位線量当たりの乳癌の発生率、平均余命の短縮などの数値から計算した。この両者を比較した結果、線量が3mSv、年齢50歳の女性、2年間隔検診の場合で利益はリスクの50倍であった。また、利益/リスク比は年齢とともに急激に増加することも示された。以上の結果からマンモグラフィ検診は現行のガイドライン、すなわち50歳以上の女性で2年間隔の検診では利益リスク分析から正当化されると結論できる。しかし、今後は実証的なモデル検診によってより正確なデータを出すことが必要であり、マンモグラフィについては線量の監視を行う精度管理システムの確立が不可欠である。
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